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                                                                                             夢を見たあとで













もともと運なんて良い方じゃないんだ

今日は殊更 ツイてない

電話問い合わせの対応とは名ばかりで
かかってきた電話に営業をかけて毎日業績を叱咤される

今日はチームの中で自分だけが契約を取れなかった

それどころか数ヶ月前に担当した客がクレーマーで
難癖をつけられ何時間も対応させられた
上司には変わるどころか無視される始末だ

何も考えたくないのにウォークマンは電池切れ

それでも ただただ丸腰でバスに乗るのが酷く孤独に思えて
聞こえもしないイヤホンをつけて乗り込んだ

 

車内の温度で曇る窓ガラスに少しだけ頭を預け

目を閉じて揺れに任せていると後方での話し声が耳に入ってきた

 


「じゃあさ 電話会社の派遣は?」
「あー よく出てるヤツね」

「何か結構募集出てるよね」

「知ってるー 時給結構よくね?」

「・・・あれは やめた方がいいよ」

「えーなに やっちん
 行った事のあるの?」

「・・・あれはノイローゼになる」

「・・・」


「あんなのマトモな人間の
 やる仕事じゃねーよ」

 

・・・

・・・


俺も本当にそう思うよ

でも 頑張って履歴書出したけど
ここしか連絡はこなかったんだ

 

君はまだ学生だね

君のような若くて先のある人は 
そうやって別の道を選べるからいいね

マトモな人間がやる事じゃない仕事を
俺はしがみついてやっているよ


向いてないと思っても

辞めたいと思っても

行くしかないんだ生きる為に

 

ありがたいと思って
やらなきゃならないんだけど

どうしても思えないんだ

 


正直 泣きたいよ


俺の人生はこんなはずじゃなかった


ただただ 真面目にコツコツ
やれればいいだけだったのに

今のこの不況の世の中ではそれすら
贅沢な注文のようで

やっと職にありついて 必死で働いても
地方都市の中小企業の疲弊は激しくて 数年で結局経費削減 人員削減と
少なくなる居場所でイス取りゲームよろしく どこへ行っても良い雰囲気の職場がなかった


俺に運がないと言えばそれまでだけど


見返してやりたいと思うような気力すら
毎日の生活でいっぱいいっぱいで
残っていない


悔しい気持ちよりも目先の生活が先


とはいえ 今の暮らしでは
先は全く見えない

職を失う度に生活のランクは下がっていくし

歳をとるたびに求人枠から締め出されていく

 

有名な歌手が歌っていた

生きるのが苦しいとか辛いとか言う前に力の限り生きろと


まだダメだろうか

まだ必死さが足りないといわれるだろうか

 

まだ生きるのが辛くなってきたと言ってはダメか

まだ苦しいと吐露してはいけないのだろうか


・・・
・・・

降りる1つ前の停留所のアナウンスで目が覚めた
ウトウトしていたようだ

隣に誰かが立っている気配がする

薄目を開けて足元を見ると 男物の靴が見えた


そうか 彼が横に立っているおかげで
通路からの風が遮断されて温かくて眠ってしまったんだ

それだけじゃない 多分身長もあるのだろう
天井の照明が遮られているようでちょうど良い暗さだ


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